アカウント営業とは?手法・新規営業との違いを解説
この記事の要点
- アカウント営業は数社〜数十社の重点顧客に絞り中長期で関係を深める手法
- 取引額に対する自社シェアや組織図の把握が選定・提案の起点になる
- 担当者個人依存を避けSFAやCRMで情報共有する体制が継続の鍵になる
アカウント営業とは、既存の重要顧客に継続的に関わり取引を拡大する営業手法のこと
アカウント営業とは、特定の顧客企業(アカウント)を担当者が中長期的に管理し、取引額や関係性を深めていく営業スタイルを指します。新規開拓のように案件単位で動くのではなく、1社あたりの年間取引額を10%〜30%程度伸ばすことや、取引部門を増やすことを目標に据える点が特徴です。
新規開拓営業との違い
新規開拓営業は「まだ取引のない企業にアプローチし、契約を獲得する」活動です。一方アカウント営業は「すでに取引がある、または取引の可能性が高い重点顧客に絞り、関係を深める」活動になります。
違いを整理すると次のようになります。
・ 対象:新規開拓は不特定多数、アカウント営業は数社〜数十社に限定
・ 期間:新規開拓は単発の案件単位、アカウント営業は半年〜数年単位
・ 評価指標:新規開拓は受注件数、アカウント営業は顧客あたりの取引額やシェア率
・ 必要なスキル:新規開拓はアプローチ数と初回提案力、アカウント営業は関係構築力と社内外の調整力
中小企業庁が公表している資料でも、既存顧客との取引深耕は新規顧客獲得よりもコストを抑えられる傾向があるとされており、限られた営業リソースを重点顧客に配分する考え方は多くの企業で採用されています。詳細な統計や定義は中小企業庁の公開情報もあわせて確認すると良いでしょう。
アカウント営業で成果を出す基本の進め方
アカウント営業は闇雲に顧客を訪問するのではなく、段階を踏んで関係を構築していく必要があります。ここでは一般的な進め方を4つのステップに分けて説明します。
ステップ1 重点顧客(ターゲットアカウント)を選定する
まず自社の既存顧客や見込み顧客の中から、取引拡大の可能性が高い企業を5社〜20社程度に絞り込みます。選定基準としてよく使われるのは以下の観点です。
・ 現在の取引額に対して、相手企業の総購買額に占める自社シェアが低い
・ 相手企業が事業拡大フェーズにあり、予算が増える見込みがある
・ 決裁者や複数部門との接点がすでにある、または作りやすい
全顧客を平等に扱おうとすると、1社あたりにかけられる時間が薄くなり、結果的にどの顧客でも目立った成果が出ないまま終わるケースがあります。重点顧客を絞ることが出発点になります。
ステップ2 顧客内の組織図と意思決定プロセスを把握する
法人取引では、現場の担当者と決裁権を持つ役職者が異なることがほとんどです。アカウント営業では「誰が」「どの部門で」「どのタイミングで」予算を決めるのかを把握することが欠かせません。名刺交換した担当者だけに提案を続け、決裁者に情報が届かないまま商談が停滞するという失敗はよく見られます。
ステップ3 顧客ごとの中長期プランを作成する
半年〜1年単位で「どの部門に」「何を」「いつ提案するか」をプランとして可視化します。プランがないまま訪問を重ねると、営業担当者の異動や引き継ぎの際に情報が失われ、それまでの関係構築が振り出しに戻ってしまうことがあります。SFAやCRMに顧客ごとの履歴と次のアクションを記録しておくことで、属人化を防ぎやすくなります。
ステップ4 定期的に関係とプランを見直す
半年に1回程度、取引額の推移や接点のある部門数を振り返り、プランを更新します。見直しを怠ると、顧客側の担当者が変わったことに気づかず、既存の提案がそのまま通用すると思い込んでしまうケースがあります。

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資料を受け取る →アカウント営業でよくある失敗パターン
アカウント営業は時間をかける分、方向性を誤ると挽回に時間がかかります。代表的な失敗パターンを3つ挙げます。
対象企業を広げすぎてしまう
「重要そうな顧客」を増やしすぎた結果、1社あたりの訪問頻度や提案の密度が下がり、新規開拓と変わらない薄い関係にとどまってしまうケースがあります。重点顧客は定期的に絞り込み直すことが望ましいとされています。
担当者個人の人脈に依存してしまう
特定の営業担当者が顧客との関係を一手に抱え、社内に情報が共有されていない状態が続くと、担当者が異動・退職した際に取引が一気に縮小するリスクがあります。商談履歴や決裁者情報は個人のメモではなく、組織で共有できる仕組みに記録しておく必要があります。
短期の売上目標だけを追ってしまう
アカウント営業は本来、中長期的な関係構築が前提の手法です。しかし四半期ごとの数字に追われるあまり、無理な値引きや過剰な納期対応で一時的な売上を作ってしまい、結果的に利益率が悪化するという状況に陥ることもあります。短期目標と中長期プランのバランスを取ることが重要です。
アカウント営業に向いている企業・向いていない企業
全ての企業にアカウント営業が適しているわけではありません。以下のような特徴がある場合は、アカウント営業の考え方を取り入れる余地があります。
・ 1社あたりの取引額が大きく、継続的な発注が見込める商材を扱っている
・ 顧客企業の組織規模が大きく、複数部門への展開余地がある
・ 営業担当者を1〜2年以上固定でき、引き継ぎコストを抑えられる体制がある
逆に、単価が低く取引が単発で終わりやすいBtoC商材や、顧客の入れ替わりが激しい業態では、アカウント営業よりも新規開拓中心の営業体制の方が効率的な場合があります。自社の商材特性と照らし合わせて判断する必要があります。
アカウント営業を支える体制づくり
アカウント営業を機能させるには、営業担当者個人のスキルだけでなく、組織としての情報共有基盤が欠かせません。SFAやCRMを用いて顧客ごとの接点履歴、決裁者情報、プランの進捗を一元管理することで、担当者が変わっても関係構築の土台を引き継ぎやすくなります。導入にあたっては、現場が入力の手間を感じにくいシンプルな項目設計にすることが、定着のポイントとして挙げられます。
法人取引における契約条件や与信管理に関わる判断は、個々の契約内容によって扱いが異なります。不明点がある場合は中小企業庁などの公的な情報や専門家への相談も活用してください。
まとめ
アカウント営業は、重点顧客を絞り込み、組織的な情報共有のもとで中長期的に関係を深めていく営業手法です。新規開拓とは評価指標も進め方も異なるため、自社の商材特性や顧客構成を踏まえたうえで、取り入れるかどうかを検討することが大切です。
よくある質問
- Q. アカウント営業とキーアカウント営業は同じ意味ですか?
- A. ほぼ同じ意味で使われることが多く、どちらも特定の重要顧客に継続的に関わる営業手法を指します。企業によっては対象顧客の規模や取引額の基準でキーアカウントとそれ以外を区別している場合があります。
- Q. アカウント営業に向いている業界はありますか?
- A. 1社あたりの取引額が大きく継続発注が見込める業界、たとえば法人向けのITシステムや設備、素材などの商材で取り入れられやすい傾向があります。単価が低く取引が単発で終わりやすい業態では効果が限定的になる場合があります。
- Q. アカウント営業を始める際、まず何から手をつければよいですか?
- A. 既存顧客の取引額や自社シェアを整理し、拡大余地のある重点顧客を5社〜20社程度に絞り込むことから始めるケースが一般的です。その後、顧客内の組織図や意思決定プロセスの把握に進みます。
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